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ロマンス(初回)(DVD付)

同じヴァイオリン独奏曲でも、ピアノ伴奏で聴くのと弦楽を中心としたオーケストラの伴奏で聴くのとでは、かなり違った印象になる。前者の強いコントラストは後者になると薄まる傾向だが、そのかわりに落ち着いたサウンドが生まれる。奥村愛の折り目正しく清らかなヴァイオリンとオーケストラ・アンサンブル金沢の共演によるこのアルバムは、あたたかく自然な音楽を聴こうとするリスナーに向いている。アイルランド民謡や抒情的なオペラ・アリアのメロディーなどからなるラインナップも、心をなごませる選曲だ。奥村のヴァイオリンは、清楚な美しい音が特徴。輝きに満ちているわけでも艶(つや)があるというわけでもないが、パステル画か水彩画のような上品な味わいがある。表現においては自己抑制的なほうだろう。細部への心遣いを常に感じさせながら演奏を進め、クライマックスの場面では、登りつめるより八合目ぐらいのところでとどまることを好む。常に声高になることがない。聴き手をあっと驚かせるような新奇な手に出ることはしないし、テクニックを見せつけるでもない。それでいて、言いたいことは言っている感じがするのが奥村の音だ。(松本泰樹)

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